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たちASMの考え

状況が大きく好転した今、メモリ事業売却を「不利な条件のまま」進めるべきでしょうか

 

危機的状況下での東芝メモリ売却契約

2017年3月期に東芝は債務超過に陥り、上場廃止の危機にありました。また同時に各金融機関との融資契約上の財務制限条項に抵触することで、デフォルト(債務不履行)の危機にもありました。

 

東芝経営陣は、そうした追い詰められた危機の中で、東芝メモリ株式会社(以下「TMC」)を売却するという判断をしました。さらに金融機関との関係も厳しくなるという状況下において、数千億円規模の設備投資が必要なメモリ事業を切り離すという判断は理解できるものでした。

 

しかし、当時東芝は、上記の理由から、虎の子の資産を急いで売らざるを得ないという、いわば叩き売りの状況にありました。入札手続の結果、Bain Capital(以下「ベイン」)を軸とするコンソーシアム(以下「ベイン連合」)へのTMCの売却が決まりましたが、WDとの紛争が継続していたことから買手候補者が限定され、またスケジュールも短期なものでした。もしそのようなプロセスをとらなければ、より高い売却価格となったことは客観的に明らかです。

 

ベイン連合への譲渡価格(以下「本件譲渡価格」)は約2兆円と開示されていますが、株式譲渡契約上の価格調整に関する開示が限定的であるため、実際の売却企業価値がいくらかであったかは明らかにされていません。また、ベイン連合の中で、一番大きい資金提供をしているのはSK Hynixであり、ベインとSK Hynixとの間には何らかの取り決めがあると考えるのが自然であるところ、その取り決め等の重要事項についても、全く開示がなされていません。そうした取り決め等が明らかにされることを期待します。

 

私たちは、上記のとおり、本件が特殊な状況下での取引であったために、本件譲渡価格は、TMCが持つ本来の事業価値に対して、重大なディスカウント要因が加味されていると考えます。

 

6,000億円増資発表前に行われた臨時株主総会でのTMC売却承認

2017年10月24日開催の臨時株主総会においてTMC売却を承認する決議がなされています。株主の皆さまは東芝の債務超過を解消するためにやむを得ないと考えてこの売却に賛成されたと思います。しかし、当該臨時株主総会のわずか17日後である11月10日に、メディアによって6,000億円の増資が報道され、同月19日には東芝が当該増資を公表しています。

 

仮に臨時株主総会の時点でこの増資の予定が示されていたとすれば、臨時株主総会において株主の皆さまの判断は同じだったでしょうか?

 

危機的状況を乗り越えた今、TMC売却について再考するべき

TMC売却は、東芝が危機的状況を克服するための手段の一つでした。その後6,000億円の増資の実行、及びWEC関連資産売却の結果、TMC売却の実行(クロージング)前に、2018年3月期末時点の債務超過からの脱却と資本の充実が確実となっています。

 

東芝により開示された資料(2017年10月6日付臨時株主総会招集通知18ページ)によると、2018年3月31日までにTMCの売却が完了しない場合、東芝側は違約金なしで売却契約を解除することが出来ることになっています。東芝の適時開示(2018年3月26日付)によると、3月23日時点で取引実行に必要な前提条件が満たされていないところ、上記臨時株主総会招集通知14ページで開示されている株式譲渡契約の規定に従えば、この場合、最短のクロージング時期は2018年5月1日となります。したがって、2018年3月31日までにTMCの売却が完了していないことから、東芝には既に売却契約の解除権が発生しています。

 

上記のとおり、ベイン連合への売却価格が、適正価格から重大なディスカウントが付与された価格であることは、入札手続に鑑み客観的に明白です。そして、東芝は既に、ベイン連合への売却を、違約金等の支払いなく明確に解除できる立場にあり、売却を実行するか解除権を行使するかを自由に選択できます。

 

そのような状況下で、何らの取引条件(売却金額や価格調整条項)を変更することなく、取引を実行することは、意図的に企業価値を大きく毀損する行為であると解釈せざるを得ず、会社法上取締役に課された善管注意義務に違反するものと解釈せざるを得ないものと考えます。

 

私たちは、東芝はTMC売却について再考するべきだと、強く考えます。

 

具体的には、べイン連合と売却条件を再交渉し、その上でTMCの適正価格以上の譲渡価格による売却を目指すべきです。仮に実現できない場合には、ベイン連合への売却ではなく、TMCの株式公開(IPO)により、市場の評価に基づく適正価格での株式売却を目指すべきだと考えます。

 

2018年3月31日までにTMCの売却が完了しない場合には契約を解除することができることから明らかなように、株主の皆さまは、東芝の債務超過を解消するためにやむを得ないと考えて、 2017年10月24日開催の臨時株主総会においてTMC売却に賛成されたと思います。東芝の債務超過が解消された現時点においては、TMC売却の前提が大きく変わった以上、東芝は、TMC売却の要否及び是非、公正な価格その他のTMC売却に関する条件について、株主総会で再度株主の意見を問うべきです。それが、解除権付きの株式譲渡契約を承認した当時の株主の合理的意思と考えられ、重要子会社の処分に株主総会の決議を要求している会社法の精神及びコーポレートガバナンスの観点からも適正な手続であると考えます。

 

なお、現在の東芝の株価は、TMC売却の条件や有無、株主還元方針、TMC以外の事業の利益ポテンシャル等に関する不確実性が理由で、過小評価されていると考えます。

 

従って、万が一現在の株価水準で希釈化を伴うような資金調達を行う場合には、当該行為も意図的に株主価値を大きく毀損する行為であると解釈せざるを得ず、TMC売却判断同様、会社法上取締役に課された善管注意義務に違反するものと解釈せざるを得ないものと考えます。